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「幻想曲」~アルノルト・シェーンベルク讃~

吹奏楽
アルノルト・シェーンベルク

令和3年8月7日

県大会前最後の練習となりました。

午前中は前日のホール練習で見えた課題を個人、パートでさらう時間。
私はスコアとにらめっこしながら、のんびりと合奏の準備をしました。

基礎合奏

これまでずっと同じことをやってきました。

スケール練習

  これは基本的に個人でさらうもの。
  全調(長調・短調)24種類。半音階、インターバル等。
  今の時期には全体で確認はあまりしませんが、時折やりました。

ロングトーン

  1)バランス練習
    多くの学校が練習に取り入れていますね。
    4つのグループによる積み重ね。

    同じ音域、少人数のグループで音がまとまる事が非常に大切です。

  2)クラリネットから順番に重ねる練習

    今年度は少しアレンジして、コントラバスに加えてEsクラリネット、バスクラリネットも最初      からロングトーンしてもらいました。

    10分ほど続きますが、本当に大きな効果がある練習です。

  3)八田先生の教本から
    5-1 中音域から高音域にさしかかる音域で、第3音のコントロールをする。

    7-1 ハーモニー練習
        これを使ってバランス練習、タンギングの練習もします。

ユニゾン練習

  B♭からEsまで降りていくユニゾン。

  これをin B♭だけでなく、様々な調性でやります。

ダイナミクス練習

  pからfまで。
  しっかりとコントロールする能力が、楽曲演奏には不可欠です。

コラール

  20種類ほど用意してランダムに実施。

  新曲試唱のように楽譜から音を採ることで、ソルフェージュ、読譜力の向上を意図しています。

  なにより、練習のための練習ではなく、より豊かな音楽表現のための練習ということを意識するために、基礎合奏の最後にコラールをやります。

そして、県大会前に音は整い、音程も合うようになります。
もちろん基礎合奏では・・・。
そして、得意のBdurは・・・。

しかし、積み重ねてきた基礎は着実に形になってきました。
実際の音で確かな手ごたえを感じています。

不動岡ホール(視聴覚室 学年集会が開ける空間。定員400名ほど)は残響が残るので、音が寄ると倍音がしっかりと聞こえます。

しっかりと倍音が聞こえる基礎合奏になりました。
昨年度はそこまで詰める時間も無かったので、2年ぶりです。

私の記憶が正しければ、2年前よりも格段に良い音になっています。
後はそれが曲に生かされればばっちりです。

課題曲5番 「幻想曲」

実は「アルノルト・シェーンベルク」を勉強しようと、ポケットスコアを買っていました。
解説が一番勉強になりましたが・・・。

結局シェーンベルクの代名詞である12音技法による作品のスコアではなく、

弦楽6重奏「浄められた夜」

吹奏楽曲「主題と変奏」

の2曲を買ってみました。

特に「主題と変奏」は吹奏楽編成がオリジナルです。
すぐに管弦楽曲版も編曲されました。

ニューヨークの出版社 G・シャーマン社が高校生の吹奏楽団も演奏できる作品という依頼により作曲されました。

初演はアメリカを代表するプロフェッショナル吹奏楽団のゴールドマン・バンド

12音技法を確立したシェーンベルクが、調性音楽を作ったことに大きな反響(批判)もあったようです。

これに対して「昔の様式に戻りたい衝動」が、調性音楽を作曲させたと述べています。
このシェーンベルクの音楽的変遷が、課題曲5番「幻想曲」に表れているように思えます。

「幻想曲」の名にふさわしい冒頭6小節間の提示部。
そこで提示された音列が「変奏」されていきます。

この「変奏」こそ、シェーンベルクが「衝動」とも述べた、古典的な音楽様式です。

さらに、後半はマーチのスタイル。

前出のゴールドマン・バンドと言えばマーチ「木陰の散歩道」(On the Mall)が有名です。
そこからインスピレーションを受けたかどうかは定かではありませんが・・・。

さて、音列は「変奏」を繰り返して展開して、終結部で「破綻」(と私は感じています)します。

そして吹奏楽で基本の調となるBdur(変ロ長調)が登場し、それを突き破るように「ポリス・ホイッスル」が鳴り響きます。

その後、クラリネットとムチ、スネアが激しくこれまで展開してきた音列(最初にクラリネット・ソロとして登場したモティーフ(動機))を演奏して終わります。

シェーンベルク 1874~1951

オーストリア出身のユダヤ系ドイツ人。

19世紀末はハプスブルク家の凋落は明らかで、ドイツ人の統合は新興のホーエンツォレルン家に横取りされます。

結局屈辱的な「アウグスライヒ(妥協)」により、支配していたハンガリーに自治権を与える事で国力を維持しようとしました。

結局、オスマン帝国に領土を拡大しようとするロシアとの対立が激化(東方問題)し、第1次世界大戦が勃発します。

ちなみに、シェーンベルクはこの戦争に従軍しました。
のちにシェーンベルク達ユダヤ人を激しく迫害するアドルフ・ヒトラーと一緒に戦ったわけです。

この時の過酷な環境で体調を崩し、戦争後の生涯にわたって病弱で苦しみました。

さらに、第2次世界大戦に突き進む中、オーストリアがナチスに併合されるとユダヤ人への迫害が一層強まり、活動の拠点をアメリカへと移します。

これは定期演奏会で演奏した「中国の不思議な役人」の作曲者ベラ・バルトークも同じです。

シェーンベルクは専門的な音楽教育を受けることはありませんでした。
銀行員時代にはアマチュアオーケストラで音楽に親しみました。

シェーンベルクは絵画に傾倒して一時期作曲から離れたり、体調悪化して大学の職を失ったりと波乱万丈の人生を送っています。

この課題曲5番「幻想曲」はシェーンベルクの12音技法だけではなく、その人生を音楽に落とし込んだ作品なのではないかと感じています。

そもそも副題が ~アルノルト・シェーンベルク讃~ですから・・・。
題名がそれを表していますよね。

そう思うと、この作品で

音楽評論家に酷評された新たな音楽への挑戦

評論家を締め出し、チケット代は払えるだけというユニークな作品発表会

学費は払えるだけの私的な勉強会。この中から次の時代を切り開くベルク、ウェーベルンが登場します。

と、いわゆる正統派「音楽家」には思い至らない自由で、ユニークな取り組みが表現されているのではないでしょうか。

私には後半のマーチが非常に「上品」に、「美しく」感じます。

木管がかなりやかましく動くのは音楽評論家たち。

その中でも自分自身を強く持って、最初のモティーフは堂々と「変奏」を繰り返していきます。

その時代を動かしてきた「信念」を感じさせる、そんなモティーフには「気高さ」が感じられるのです。

だんだんこの作品が面白くなってきました。
まだまだこの作品と向かい合えるように、明日の県大会では精一杯の演奏をしてきます。

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