今日のウクライナ
ロシア・ラブロフ外相が、クリミアとの外相会談後の記者会見。
「ロシアは攻撃していない。」
「クリミアはアメリカ合衆国国防総省による実験場になっている。」
これまたとんちんかんな主張に聞こえますね。
これが一体どのような意味があるのでしょうか。
核兵器の使用
毎日テレビ、YouTubeなどで見ない日はないほど引っ張りだこの小泉悠氏。
小泉氏は外務省の分析専門官、ロシア科学アカデミーの客員研究員などを経て、軍事アナリスト、評論家をしている。現在、東京大学先端科学技術研究センター専任講師。
埼玉が輩出したロシア通である佐藤優(すぐる)氏と似たような経歴。
とは言え、小泉氏はもう少し客観性をお持ちのようです。
戦略核兵器と戦術核兵器
戦略兵器はICBM(大陸間弾道ミサイル)、INF(中距離弾道ミサイル)など。
戦術核兵器は射程500キロ以下(とされる)のミサイルを使用する核兵器。
「短距離核戦力」とも呼ばれます。
この戦術核兵器は、いわゆる「使える核」として開発が進みました。
戦略核兵器は「威嚇」のためにのみ存在する。
使用するときは「人類の滅亡」を意味します。
これに対して、戦術核兵器は局地的な戦場に使用できる規模を想定して開発されました。
かつて1991年 マルタ会談にて冷戦を終結させた
米ブッシュ(父)大統領とソ連・ゴルバチョフ大統領
この2人によって、この戦術核兵器は削減、放棄が進められました。
冷戦が終わり、実際に核を使用するような危機は去ったのですから、まずは小型の核から削減という話だったのです。
ちなみに、ソ連側はひっ迫した財政を再建させるために何としても軍縮を進めなければなりませんでした。
しかし、歴史はそのまま「核廃絶」へとは進みませんでした。
1999年 ロシアでは指導者がエリツィンからプーチンへと交代しました。
ソ連崩壊、東西冷戦終結の頃、同時進行的にユーゴスラヴィア内戦が泥沼化していきました。これに、NATO軍が介入して空爆を実施しました。
すでにソヴィエト連邦が崩壊し、経済が破綻、大混乱のロシアには、かつてソ連が有した軍事力を維持して西側に対抗することは不可能でした。
そこで、「戦術核兵器」の再導入が検討され研究が続きました。
つまり、かつての軍事的均衡を保つための「戦術核兵器」だったのです。
「戦術核兵器」の使用方針
現在に至るまで30年ほど研究され続けいている「戦術核兵器」。
この使用については2つの方向性があると、小泉氏は述べています。
1 しぶとい抵抗勢力を諦めさせるため。
敵勢力を鎮圧できないときに、相手の急所へピンポイントで「戦術核兵器」を使用する。
これにより、被害を最小限にして成果を手にする。
2 敵同盟(NATOなどを想定)が介入するのを防ぐ
核兵器を使用することで、さらなる軍事介入を防ぐ。
もうお気が付きですね。
これって、現在のウクライナがぴったりです。
1 しぶとい抵抗勢力。
2 NATOの介入を防ぐ。
ということで、「戦術核兵器」の使用について危険性が高まっています。
「戦争はしていない。」
ここで、このピント外れな意見。
ロシアの領域内に、アメリカ合衆国が介入してきていると言っているのです。
そもそもウクライナはロシアなんです。(プーチン大統領の歴史的認識)
だから「戦術核兵器」を使うという大義名分が成り立つ。
あくまで防衛のための仕方のない戦い。
昨日から登場したロシアの主張は、その前振りのように思えてなりません。
プーチン大統領の読み間違え
いくら専門家でもプーチン大統領の心までは分析しきれません。
とは言え、軍事侵攻がプーチン大統領の思うように行っていない、という見立てが主流になっています。
そもそも、ウクライナ戦争がロシアにとってどれほどの利があるのか?という根本的で、最も重要な「戦争目的」の合理的な答えを多くの専門家導き出せていません。
となると、今後もプーチン大統領は常識的な選択肢を誤る場面があるかもしれません。
そこで「戦術核兵器」の使用も例えば、
1 ウクライナは降伏せず。
核兵器を使用されても屈服しない、という可能性も大いにあります。
日本に投下された広島、長崎規模の被害が出ればまた別でしょうが・・・。
広島 14万人(1945年12月まで)
長崎 7万人以上(1945年12月まで)
※その後もさらに原爆症(放射線による)により多くの方が亡くなります。
これを現代にはやれないでしょう。(っていう常識はプーチン大統領には通じませんかね)
2 NATOの参戦
NATOを遠ざけるための「戦術核兵器」が、逆に参戦の口実になってしまう。
さらに
光明を見出すバイデン大統領
2021年8月 アフガニスタン撤退
そして、国内のインフォメーションが国民に大きなストレスを与えているバイデン大統領。
2022年11月の中間選挙では大敗が予想されていたのですが・・・。
最新のロイター/イプソスの世論調査(3月1日 ロイター通信発)
全体の支持率は43%
不支持は53%
※米国は誤った方向に進んでいる 61%
と、相変わらず厳しい。
しかし、ウクライナ戦争の対応について
ウクライナに武器を提供すべき 71%
ロシアに追加制裁を加えるべき 77%
と、ウクライナ対策について米国民の方針はほぼまとまっている。
これを背景にバイデン大統領がウクライナ政策を推し進めることで、国民から一定の支持を獲得していけることが期待されます。
さて、外交でなかなか良い方向に導く判断が出来ないバイデン大統領。
ここが剣ヶ峰!と勝負をかける可能性が上がっています。
結構危ういバイデン外交・・・。
判断ミスが続くと言われるプーチン大統領。
ここがぶつかる可能性が高まります。
日本は?
3月10日 ロシアは北方領土で地対空ミサイルの発射訓練を実施。
北朝鮮も一生懸命にミサイルを発射していますが、ここにロシアが加わるのでしょうか。
中国はあくまでロシアの側に立つ姿勢を維持しています。
絶妙に立ち位置を調整しながら。
非常に難しい決断を迫られるのではないでしょうか。
とうとう世界が戦争の渦に巻き込まれて行ってしまうのではないでしょうか。
恐ろしいことですが、この見立て通りにならないことを願うばかりです。
ちなみに、これまでウクライナ軍の攻撃映像などは公開されていませんでした。
それが昨日あたりから、ウクライナ軍の攻撃成功!という映像が徐々に増えてきました。
こちらは、追い詰められているウクライナ国民へのプロパガンダ的な情報なのでしょうか。
戦争が終わっても、すべてが明らかになるわけではありません。
だからこそ、今現在漏れてくる真実をしっかりと受け止めて理解することが大切だと思います。
私は、このウクライナ戦争を通じて思いのほか同時代人にも歴史が感じられるものなのだと驚いています。もっとよく分からない間に、色々なことが進むものと思っていました。
これが今の時代の特徴なのかもしれません。
コメント